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蘭塾講師

本『嫌われる勇気』と激辛麺ブルダックポックンミョン2×Spicyの共通点3つ

荒川ひろこ

こんにちは。英語講師の荒川ひろこです。

ある人のおすすめで、『嫌われる勇気』という本をKindleで買って読みました。少し前の本で、私は知りませんでしたが、大ベストセラーだとか。

以下、1回読んだ状態で、これは激辛インスタント麺に似ているな・・・という印象をもったので、書き留めておきます(何度も読み返した後の分析ではなく、個人の印象です)。

【激辛麺ブルダック炒め麵】

韓国のインスタント激辛麺、オランダでも各種売られており、食べたことある方も多いかもしれません。日本でも人気と聞きました。

先日、ブルダック(プルダック?)炒め麺「×2Spicy」というのを食べました。パッケージのイラストのトリが怒りの表情とともに口から火を噴いています。一説によればシリーズで一番辛いらしい。

私は辛いもの耐性はそこそこあるほうと自負していましたが、「×2Spicy」 はすさまじい辛さであり、半分ほど頑張ってそのまま食べたものの、残りはチーズを足し、水を飲みまくり、なんとか完食できました。

実は、以前に同シリーズのカルボナーラ風味(ピンク色のパッケージ)を食べたことがあり、ジャンクフードの魅力が爆発した味で、おいしかったです。これはシリーズ内ではマイルドなほうだったと知りました。

こんな辛い麺が日本でも人気なのに驚いています。万人受けというわけではないのでしょうけど。

【本『嫌われる勇気』と「激辛麺」の類似性】

『嫌われる勇気』とブルダック炒め麵×2Spicy で似ているなと思ったところは次の3点です。

  1. 極端に強い刺激
  2. 「わかりやすさ」に特化
  3. 後に残るヒリヒリ感

【類似性その1. 極端に強い刺激】

本書は、青年と哲人の対話形式をとっており、時に応じて説明文が挟み込まれています。

青年はいわゆる怒れる若者という設定で、彼の台詞のほとんどが感嘆符で終わっているといってもいいくらい(検証はしていないが印象として)、始終激怒している。

一方の哲人は穏やかという設定のようですが、彼の台詞をみると、実は断定口調や否定口調が多い(これも検証していないが印象として)。

フィクションであることを強調するため、昭和時代の少年漫画みたいな口調をあえて採用しているのかもですね。現実では、青年も哲人も、実際の社会生活でこんな話し方したら喧嘩になるやろ。

このような激烈口調のオンパレードの中に時折織り込まれる説明文もこれまた熱狂的。神のような俯瞰的立場の者ではなく、例えるならプロレスのレフェリーかな。

なぜこんなに全登場人物がわめいているのか。本書内の青年と説明文は、最終的に全て哲人の理論に吸い込まれていきます。この物語の目的は哲人の理論(=「岸見アドラー学」)のすべてを肯定することです。

共著者の一人である古賀氏は、「ソクラテスの思想はプラトンによって書き残され」たのと同様に「岸見先生のプラトンとなります」と言って、この「岸見アドラー学」の本を作ったようです(「あとがき」参照)。

このような古賀氏の岸見アドラー学に対する熱狂が原因なのかどうか、登場人物全員の激烈口調の足し算による文体は、私には辛くて辛くてなかなか食べ進めない激辛麵のように思えたのでした。

(以下、少し横道:対話形式の本書内で、哲人は常に正しい。青年からのフィードバックで哲人の意見が変わることはない。本書では、あらゆる人間関係において、縦の関係ではなく横の関係を築くことが大切と説かれている。その一方で、青年と哲人の関係は、哲人が常に知識を与える側に立っている縦の関係のように私には思えた。 年下が年上に激烈なセリフを吐きつづけ、年上の人間がヨシヨシ苦しゅうないと受け入れること、それのみでは横の関係っていえなくない?
確かに、現実には、なかなか年上に限らず他人にいろいろ言えない、そこを気にせず勇気を持てというのは、それは全くその通り。一方、言い方の問題って大切・・・)

【類似性その2.「わかりやすさ」に特化】

この本において、わかりやすさ、シンプルさを追求するあまり、過度な一般化、あるいは、言葉や説明をそぎ落とした結果、説明不足となっているポイントが複数あります。

最たるものは「トラウマは、存在しない」。この論点については既に多くの批判が出ているようなので割愛しますが、この例を筆頭に、「普通であることの勇気」や、「すべての悩みは対人関係」など、センセーショナルな断言を多用することで「わかりやすさ」に全振りして、例外や細部を捨象しています。

全ての物事に例外があることは周知の事実でしょう。そこはあえて言わなくてもわかるよね?ということなのかもしれません。一つ一つの事象に「例外はあるけど」とか「全員には当てはまらないけど」とか「常にそうとは限らないけど」と但し書きをつけると、インパクトが薄くなり、ベストセラーにはならなかったかもしれません。

私自身は、心理学の専門家ではありませんが、一個人として心底信じていることがあります。それは、幸せとか心のことを扱うときには、細部こそが大切ということです。この世の全ての人間が一斉に同じソリューションを持つことはないです。

世界はシンプルである。と言い切ってしまうことと、辛い麺、どや、辛さ2倍!というのと、発想が似てるなと思いました。

私の読みこみが足りず、よく読めばきちんと細部の書き込みがあるのかもしませんが、激辛文体なのでゆっくり味わえていません。

【類似性その3.後で残るヒリヒリ感】

青年は対話の中で「厳しい」という言葉を何度か発しています。私自身も、痛いところを突かれた箇所が多々あります。それらの指摘は、上で挙げたように激辛言語を用いられて行われます。

本書では、勇気、幸せ、共同体のことなどについても語られていますが、読後、勇気づけられて温かい幸せ気持ちになったかというと、かなりヒリヒリした感触が残りました。 

このくらい強いヒリヒリ感があるものだからこそベストセラーになったのかもですね。

なお、私は辛い麺は決して嫌いなわけではなく、辛さ2倍でない、そこそこ辛い韓国ラーメンは好きで時々食べてます。

今は、やさしい出汁たっぷりのうどんが恋しい・・・

以上、3つの共通点を挙げてみました。(蛇足:理屈はどのようにでもつけられるという例ですね)

【「嫌わない勇気」】

キャッチーなタイトル『嫌われる勇気』はこの本が売れた大きな要因のひとつでしょう。

これは私も賛成で、嫌われる勇気というのは素晴らしい。

これをひっくり返すと、嫌いな人がいてもいい。更に進めて、「私は彼・彼女のことを嫌わなくてもいいんだ」と思うことも可能です。

人からどう見られようが関係ない。他人は変えられない。というのはまさにその通りです。しかし、やっぱり今の私には少し辛さ控えめがいいです。だから、せめて私が人を嫌わなくて済むようにしてみよう。そうすると少し楽かも。他人を嫌わない勇気、ということ。

ダライラマの言葉で「Do not let the behavior of others destroy your inner peace」というものがあるそうです。これは同じことを違う表現で言っていると理解しています。(最後に英語を入れて、英語講師による記事という体裁にする技。)

他にも、本書で参考になる、なるほどと思うことも多くあったことを記しておきます。例えば、蘭塾において「保護者が子どもの問題に立ち入らないこと!」としっかり線引きしていることも、本書でいう「課題の分離」に当てはまるものでしょう。

蘭塾のジャパ授業では、『嫌われる勇気』を教材に論文を書いたりもしてるそうです。超ベストセラーを批判的に読む機会があるのは素晴らしいことです。

【続編】

続編『愛される勇気』もあるとのこと。激辛麺を連続では食べられないので、また今度、落ち着いたときにかな・・・。ピンク色のパッケージみたいに少しマイルドになっているのかな。

【おまけ:今すぐ幸せになる方法】

そういうお前はどうなんや。という声があるかもしれませんので、私が今すぐ幸せになるシンプルな秘訣を僭越ながらお教えしましょう。

それは、快便・快眠です。

体調によっては難しいときもあるけど、現実的・具体的なアクションプランを取れることも多くあります。